Letter
幹細胞:mitofusin 2はリンパ球系細胞への分解能が高い造血幹細胞を維持する
Nature 529, 7587 doi: 10.1038/nature16500
全ての血球細胞系譜の産生を支えている造血幹細胞(HSC)は、ATP産生を解糖に依存しているが、ミトコンドリアが果たす役割についてはほとんど注目されていない。本研究ではマウスを用い、HSCの重要な調節因子であるPrdm16の短いアイソフォームが、ミトコンドリアの融合やミトコンドリアの小胞体への係留に関わるタンパク質であるmitofusin 2(Mfn2)を誘導することを示す。単一細胞移植解析を含む過剰発現と欠失による研究から、Mfn2はリンパ球系細胞への分化能が高いHSCの維持に特異的に必要だが、骨髄球系細胞を主に産生するHSCの維持には全くかほとんど必要でないことが明らかになった。Mfn2は、その小胞体–ミトコンドリア係留活性を介して細胞内Ca2+の緩衝を増強し、それによって、Nfat(nuclear factor of activated T cell)の核内移行と転写活性を負に調節する。HSCでのMfn2欠失の影響はNfatの阻害によって救済されることから、リンパ球系細胞への分化能が高いHSCの維持において、Nfatの負の調節がMfn2の最も重要な下流機構であることが明らかになった。従ってミトコンドリアはHSCにおいて重要な役割を担っている。これらの知見は、HSCの間にクローン不均一性が生じる機構を提示しており、移植したHSCの分化を目的の系譜に向かわせるための手法の設計にもつながる可能性がある。

