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がん:mTORC1を介した翻訳伸長が腸の腫瘍のイニシエーションと成長を制限する
Nature 517, 7535 doi: 10.1038/nature13896
APCの不活性化は、大腸がんを発生しやすい素質を作る強い要因であることから、APCの機能を失った細胞に特異的な脆弱性を探す研究が進められている。mTOR経路を介したシグナル伝達は、上皮細胞の増殖と腫瘍の成長に必要なことが知られており、現在の考え方ではmTOR活性が果たす不可欠な役割は、4EBP1のリン酸化を介した翻訳開始の促進だとされている。このモデルによれば、mTOR阻害剤であるラパマイシンは、4EBP1を強く阻害はしないため、APC欠失病変のがんのプログレッションを抑制する効果は低いと考えられる。今回我々はマウスを用いて、mTOR複合体1(mTORC1)の活性はApc欠失腸細胞の増殖に絶対に必要であるが、野生型細胞では必要ないことを明らかにし、これが治療介入の予想外の機会になることを示した。APC欠失細胞では予想通りタンパク質合成が増加していたが、律速要因は翻訳開始ではなく、翻訳の伸長段階であることが判明した。機構的には、APC欠失細胞の増殖には、mTORC1が関与するeEF2キナーゼの阻害が必要である。また、すでに確立したAPC欠失腺腫にラパマイシンを投与すると、mTORC1–S6K–eEF2K経路を介してeEF2が標的とされ、腫瘍細胞の成長停止と分化が引き起こされることは重要である。これらの知見を総合すると、ラパログのような既存の臨床認可されている医薬品を使って翻訳の伸長段階を阻害すれば、大腸がんの発生リスクの高い患者の治療に役立つことは明らかだと考えられる。

