構造生物学:Zn2+輸送性P型ATPアーゼの構造と機構
Nature 514, 7523 doi: 10.1038/nature13618
亜鉛は全ての生物に必須の微量栄養素であり、DNA結合や酵素触媒反応などに関わるさまざまなタンパク質がシグナル伝達などの特有の機能を行うのに不可欠である。原核生物や光合成真核生物では、クラスIBのZn2+輸送性P型ATPアーゼ(ZntA)が、Zn2+やそれと近縁の元素の細胞内分布や解毒に極めて重要な役割を果たしている。今回我々は、D群赤痢菌Shigella sonnei由来のZntAの基底状態であるリン酸化酵素(E2P)状態と、脱リン酸化中間体(E2·Pi)に当たる結晶構造(分解能はそれぞれ3.2 Åおよび2.7 Å)を示す。これらの構造から、膜界面に両親媒性のヘリックスを持つ、Cu+-ATPアーゼに類似した折りたたみ構造が明らかになった。負電荷を持つ保存された漏斗構造が、この膜界面領域と膜内の高親和性イオン結合部位をつないでおり、輸送体による細胞へのZa2+イオンの選択的取り込みを促進していると考えられる。E2P構造では、広い細胞外放出経路が見られ、これは高親和性部位にあるC392、C394、D714などの保存された残基群に達している。この経路はE2·Pi状態では閉じていて、そこではD714が、保存されたK693残基と相互作用している。K693はおそらく、H+-ATPアーゼで考えられているように、内在性のカウンターイオンとして働いて、Zn2+放出を誘発しているのだろう。実際、リポソームを用いた輸送実験では、対向輸送なしでもZntAの活性が見られることを裏付ける証拠が得られている。これらの知見は、PIB型Zn2+-ATPアーゼとPIII型H+-ATPアーゼ間に機能的関連があることを示唆しており、同時に筋小胞体/小胞体Ca2+-ATPアーゼ(SERCA)やNa+, K+-ATPアーゼなどのPII型ATPアーゼに類似した、細胞外放出経路の構造的特徴を明らかにしている。今回の結果は、細胞での亜鉛輸送に関する解明を大きく進展させ、生物工学や生物医学における新たな可能性を示すものだ。

