構造生物学:Gタンパク質共役受容体によるアレスチンの誘導の可視化
Nature 512, 7513 doi: 10.1038/nature13430
Gタンパク質共役受容体(GPCR)はβアレスチンによって厳密に調節されており、アレスチンはGタンパク質シグナル伝達を脱感作するだけでなく、Gタンパク質に依存しない一連のシグナル伝達も開始させる。β2アドレナリン受容体(β2AR)–Gタンパク質複合体など、いくつものGPCRの構造データが最近明らかにされ、受容体活性化の構造基盤について新たな手がかりが得られている。しかし、これを補足する、活性化GPCRへのβアレスチン誘導についての情報はまだ得られていない。その主な理由は、構造研究のための安定な受容体–βアレスチン複合体を得るのが難しいことである。今回我々は、機能を持ったヒトβ2AR–βアレスチン1複合体を形成させて精製する方法を考案した。この複合体を使い、単粒子負染色電子顕微鏡法によってその構造を可視化し、水素重水素交換質量分析法(HDX-MS)と化学的架橋法によってβ2ARとβアレスチン1との相互作用の性質を明らかにすることができた。電子顕微鏡の二次元平均像と三次元再構成像から、βアレスチン1のβ2ARへの結合は、それぞれ別の相互作用群が関わる2つの方式によるもので、1つは受容体のリン酸化されたカルボキシ末端との結合、もう1つは受容体の7回膜貫通部分のコアとの結合であることが分かった。HDXが低い領域と架橋された残基の確定から、βアレスチン1のフィンガーループが受容体の7回膜貫通部分コアと結合していると考えられる。対照的に、HDXレベルが高くなっている狭い領域は、βアレスチン1のNドメイン、Cドメインの両方にあって、β2ARに結合する際に大きな変化が見られる動的領域を示している。活性化βアレスチン1とβ2ARの結晶構造を、電子顕微鏡観察から得られた電子密度地図に重ね合わせ、HDX-MSと架橋実験によって得られた制約を取り込むことでβ2AR–βアレスチンシグナル伝達複合体の分子モデルが作成され、それによって、受容体–アレスチン複合体の全体構造について有用な手がかりが得られた。今回得られた動態および構造に関する情報は、アレスチンによるGPCR調節の基盤解明に役立つ枠組みとなるだろう。

