Letter

生物物理:RecBCDによるDNA巻き戻しの不均一性は、静止状態の分子が作り出す平衡状態から生じる

Nature 500, 7463 doi: 10.1038/nature12333

単一分子研究では、バルク相計測で事態を複雑にする非同期性やアンサンブル平均化という要因を回避でき、分子の作用機作についての手がかりが得られ、個々の分子間の注目すべき違いが明らかになる。大腸菌(Escherichia coli)のRecBCDヘリカーゼでは、このような手法を使うことでずっと以前からの疑問点のいくつかが解決され、この酵素の作用機構について、他の方法では望めない手がかりが得られている。不可解なことに、個々の酵素分子がDNAを巻き戻す速度にはかなりの違いが見られるが、この不均一性が何に起因するのかは解明されていない。本論文では、酵素のこうした挙動の物理的基盤を明らかにする。個々のRecBCD分子はどれも、平均約30,000ステップという定常的な速度でDNAを巻き戻すが、リガンドであるMg2+-ATPを枯渇させることで1個の酵素–DNA複合体を一時的に停止させると、リガンドを戻しても、その酵素がDNAを巻き戻すその後の速度が変化することがあるのが分かった。速度変化を起こす分子の割合は中断期間の長さとともに指数関数的に増加し、半減期は約1秒であることから、分子が反応を停止している間にコンホメーション変化が起こったと考えられる。停止させた後の個々の分子の速度は、その集団で最初に見られた速度分布の範囲内に収まっていた。基質の結合によって、酵素が平衡状態にある多数のサブ状態コンホメーションの中の1つに安定化され、それが個々のRecBCD分子の反応速度を律速する移動行動を決定付けると我々は考える。安定化された個々のサブ状態は、1個のDNA分子を連続的に巻き戻していく時間(約1分)持続し得る。1個のDNA分子をほどく過程は数万もの触媒反応からなり、その各段階は、速度論的挙動を変化させるのに必要なコンホメーション変化に比べて、所要時間がはるかに短い。速度を決定するサブ状態のコンホメーションがリガンドに依存してこのように安定化されるために、RecBCD分子の間でヘリカーゼ活性に静的なばらつきがあるように見えるのだが、実際には、これは1個の分子が連続的移動する際に、多数の平衡状態の中からどの状態をとるかを表しているのである。

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