生物物理:セラミド-1-リン酸輸送タンパク質による非小胞性輸送はエイコサノイドを調節する
Nature 500, 7463 doi: 10.1038/nature12332
リン酸化スフィンゴ脂質であるセラミド-1-リン酸(C1P)とスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、細胞の増殖、生存、移動、炎症の重要な調節因子であることが明らかになっている。セラミドキナーゼによって作られるC1Pは、IVA型細胞質ホスホリパーゼA2α(cPLA2α)の活性化因子である。cPLA2αはアラキドン酸の遊離を律速する因子で、アラキドン酸は炎症促進性エイコサノイド産生に用いられ、喘息や気道過敏症、がん、アテローム性動脈硬化症、血栓症などの病気の発症に関わっている。エイコサノイドの作用を調整し、慢性炎症による損傷を避けるためには、細胞は細胞内の特定部位を標的としてC1Pを輸送し提示する過程を効率よく行う必要がある。これには小胞輸送が適当だと考えられるが、C1Pを感知、輸送、提示する非小胞性機構は、まだ調べられていない。また、リン酸基を頭部に持つシグナル伝達性脂質、すなわちC1P、ホスファチジン酸やそのリゾ誘導体の間で、選択的に認識、結合を行う仕組みの分子基盤もまだ解明されていない。今回、広範に発現されている脂質輸送タンパク質のヒトGLTPD1(ここではCPTPと呼ぶ)が、C1Pの膜間での特異的な輸送を行っていることが分かった。結晶構造から、C1Pとの結合は表面に位置する今まで知られていなかったリン酸頭基認識中心を介して行われることが明らかになった。この認識中心は内部にある疎水性ポケットにつながっており、このポケットは裂け目の開閉に似たゲーティング機構を用いて適応的に広がることで、異なった長さの脂質鎖を収められる。主にαヘリックスからなる2つの層でできた「サンドイッチ」状のトポロジーから、CPTPは新規な折りたたみを持つ糖脂質輸送タンパク質サブファミリーの典型であることが分かった。CPTPは細胞質に存在するが、トランスゴルジ網、核および細胞膜と結合している。RNA干渉によってCPTPを枯渇させると、C1Pの定常状態濃度が上昇し、ゴルジ層板の形態が変化する。その結果、細胞膜ではC1Pが減少し、ゴルジ複合体では増加し、それが刺激となってアラキドン酸のcPLA2αによる遊離が起こり、炎症促進性エイコサノイドの産生が引き起こされる。

