プロテオミクス:量的形質の解析に使用できる、酵母プロテオームの完全な質量分析マップ
Nature 494, 7436 doi: 10.1038/nature11835
研究中の系の成分についてのアクセス可能で完全な参照マップは、非常に有用な研究手段となることが、生命科学のさまざまな分野での実験から示唆されている。このようなマップの例としては、分子の分光学的特性に関するライブラリーや分析化学、法化学における薬物構造データベースなどが挙げられる。こうしたマップやそれを活用する手法は、どのような試料についてもマップに含まれる分子の存在や量を調べられる信頼性の高い測定法で成り立っている。これまでのところ、プロテオームについてこのようなマップを作成しようとする試みは、いずれもプロテオームを完全に網羅するところまでは達していない。今回我々は、ハイスループットペプチド合成と質量分析法に基づく戦略を使って、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)プロテオームのほぼ完全な参照マップ(ゲノムから推定されるタンパク質の約97%を網羅)を作成した。作製された質量分析マップは2種類で、1つは発見型研究(ショットガン法による)、もう1つは仮説主導型研究(ターゲット法による)プロテオーム解析に適している。この2種類のマップを合わせれば、現在のプロテオミクス技術で行われる研究の大部分に役立つ、完全なプロテオーム測定法がそろうことになる。このマップの有用性を明らかにするため、これを用いてタンパク質の量的形質遺伝子座(QTL)解析を行った。QTL解析では、膨大な数の試料について、同一のペプチド群を正確に測定する必要がある。78株を超える酵母でタンパク質の測定を行い、独立した遺伝子座間に、関連タンパク質の量に影響を及ぼす複雑な関係があることが明らかになった。これらの結果は、タンパク質レベルを適応変化させるが、機能的に関連した経路に含まれるタンパク質の化学量論的関係は維持するような多型セットの獲得が、選択圧によって起こりやすくなることを示唆している。

