Letter

細胞:再プログラム化調節因子としてのクロマチン修飾酵素

Nature 483, 7391 doi: 10.1038/nature10953

体細胞の再プログラム化によって誘導多能性幹細胞(iPSC)を作製する際には、大規模なエピジェネティックリモデリングが起こる。再プログラム化の前後での細胞のそれぞれのエピジェネティック状態と関連したクロマチン標識について、それらを調節する複数のタンパク質が知られているが、再プログラム化における特定のクロマチン修飾酵素の役割は、まだ明らかにされていない。クロマチン修飾タンパク質が、再プログラム化に対してどのように影響を及ぼすのかを調べるために、我々は短鎖ヘアピンRNA(shRNA)を用いてDNAやヒストンのメチル化経路に関与する遺伝子を標的とし、iPSC作製に対する正と負の調節因子を同定した。ヒストン3リシン27のメチルトランスフェラーゼEZH2を含むポリコーム抑制複合体1および2の構成因子の抑制は、再プログラム化の効率を低下させた一方で、SUV39H1やYY1、またDOT1Lの抑制は再プログラム化を促進した。特に、H3K79のヒストンメチルトランスフェラーゼであるDOT1LのshRNA、あるいは低分子化合物による阻害は、再プログラム化を促進してiPSCコロニーの収量を著しく増加させ、KLF4とc-Myc(別名MYC)の代わりとなった。再プログラム化の初期過程でのDOT1Lの抑制は、2つの代替因子NANOGとLIN28の顕著な増加を引き起こした。この2つは再プログラム化の促進に重要な役割を担っている因子である。H3K79me2の分布をゲノム規模で解析したところ、再プログラム化の初期段階で、上皮間葉移行に関連する繊維芽細胞特異的遺伝子でH3K79me2が消失することが明らかになった。DOT1Lの阻害により、多能性状態における抑制が運命付けられた遺伝子でのH3K79me2標識の消失が促進された。以上の結果は、特定のクロマチン修飾酵素には、再プログラム化に対して障壁として働くものも、促進因子としても働くものもあることを示しており、また、より少ない転写因子の導入で、より効率的にiPSCを作製するためには、どのようにクロマチン修飾酵素の調節を行えばよいかを明らかにしている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度