染色体18q21に位置するDCC(deleted in colorectal carcinoma)は、1990年代初頭に発見されて以来、その欠失が大部分の進行性結腸直腸がんやその他の多くのがんで見られることから、腫瘍抑制因子ではないかと考えられてきた。DCCはネトリン1受容体ファミリーに属しており、依存性受容体として機能して、リガンド結合に依存して生存やアポトーシスを制御する。しかし腫瘍抑制遺伝子としてのDCCの役割は、DCC特異的な変異がまれで、同じ染色体領域に他にも腫瘍抑制遺伝子があるため議論が続いている。本論文では、p53の体細胞レベルでの不活性化によって生じた乳がんマウスモデルにおいて、さらにDCCを欠失させると原発腫瘍の表現形に影響を与えることなしに転移巣形成が促進されることを示す。さらに、p53欠損マウス乳がんに由来する細胞培養ではDCCの発現がネトリン1依存的な細胞生存を制御することが実証され、DCCを欠く腫瘍細胞の転移能の亢進の機構的基盤が得られた。in vivoでの腫瘍細胞の生存がDCCの欠失で増強されたことは、この考えと合致する。総合すると、我々のデータは、播種した腫瘍細胞の生存を制限する状況依存性の腫瘍抑制因子としてDCCが機能することを裏付けている。