Article 遺伝:プリオンは野生型酵母の表現型遺伝における広く見られる機構である 2012年2月16日 Nature 482, 7385 doi: 10.1038/nature10875 酵母のプリオンタンパク質では、自己を鋳型とするコンホメーションが、エピジェネティックな遺伝因子として作用する。酵母のプリオンは、遺伝性の表現型多様性を生じさせて、変動する環境中での生存と新たな形質の進化を促進する機構の1つとなっている可能性がある。しかし、この仮説については異論が多い。これまで酵母野生株では新しい形質を生み出すプリオンが見つかっておらず、これがこのようなプリオンは実験室の培養でまれに生じる「病的異変」だとする考え方につながっている。今回我々は、出芽酵母(Saccharomyces)の約700の野生株で、[PSI+]もしくは[MOT3+]について生化学的に調べ、多くの株でこれらのプリオンを見いだした。これらのプリオンによって生じる表現型は多様で、選択的な条件下で有益になることが多かった。1つの株内に存在する変異の組み合わせが減数分裂時に変化するだけで、このような1つの形質が容易に固定されてしっかり定着し、プリオンに依存しなくなる。さらに、未知のプリオン因子について遺伝学的スクリーニングを行い、野生株の3分の1に未知のプリオンが存在することがわかった。これらによっても、多様性がもたらされ、多くの場合有益な表現型が生じていた。従って、プリオンは自然界で遺伝性形質を幅広く制御しており、その制御様式が適応機会を大幅に拡張させている可能性がある。 Full Text PDF 目次へ戻る