Letter 細胞:単一のがん遺伝子を発現する細胞の、抑制的な上皮環境からのアウトグロース 2012年2月16日 Nature 482, 7385 doi: 10.1038/nature10826 腫瘍発生は、ほかの点では組織学的に正常な組織内にある単一細胞から開始されるクローン進化過程である。発がん性変化を維持している単一の散発的な変異細胞が、厳密に制御された組織環境内で、どのようにして進化するのかについては明らかになっていない。今回我々は、モデルとして器官型乳腺腺房を用い、単一細胞にがん遺伝子発現を誘導してその影響を調べ、組織化された上皮性環境から発がん性変化によってクローン進行が開始する過程を解明した。細胞周期チェックポイント(例;ヒト乳頭腫ウィルス16のE7、サイクリンD1)の特異的な阻害、Myc転写の脱調節、またはAKTシグナル伝達を活性化するがん遺伝子を過剰発現するように誘導された散発性細胞は、増殖が抑制されている腺房内では静止状態のままだった。それとは対照的に、ERBB2を過剰発現する単一細胞は、上皮層からの細胞移動などの細胞内カスケード反応を開始させ、それに加えて初期の上皮性腫瘍における腫瘍性進行の特徴である管腔アウトグロース(outgrowth)も開始した。さらに、ERBB2を介する内腔への細胞移動は、細胞外シグナル調節性キナーゼおよびマトリックスメタロプロテアーゼの活性に依存し、局所的細胞–マトリックス間接着を変化させる遺伝的変更によって細胞移動が促進された。また、管腔への細胞の移動が、静止状態にあるがん遺伝子発現細胞の死または増殖かのいずれかを促進することによりクローン選択を駆動する可能性があり、それは既存の変更が付着非依存性の生存および増殖を可能にするかどうかによって決まるという証拠を提示する。今回のデータは、単一のがん遺伝子を発現する細胞の、組織化された上皮構造からの最初のアウトグロースは高度に調節された過程であることを示しており、我々は、細胞移動機構によって、散発性の変異細胞は抑制的な微小環境から逃れることができ、これらの細胞の本来のニッチ外での生存と増殖のためのクローン選択が誘発されるという説を提案する。 Full Text PDF 目次へ戻る