マイクロRNA(miRNA)は小型の非コードRNAで、メッセンジャーRNAとタンパク質の合成の空間的・時間的調節にかかわっている。miRNAの発現異常は、発生異常や心臓血管疾患、がんなどの病気につながるが、miRNAの生合成を調節するシグナルや反応過程はほとんど知られていない。トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)と骨形成タンパク質(BMP)ファミリーの増殖因子は、発生や血管形成のような成体組織の恒常性維持過程で起こる重要な生物学的過程を調整している。今回我々は、TGF-βとBMPによるヒト血管平滑筋細胞の収縮型表現型の誘導に、miR-21が介在することを明らかにする。miR-21がPDCD4(programmed cell death 4)を下方制御し、次にこれが平滑筋収縮遺伝子の負の調節因子として働く。意外にも、TGF-βとBMPによるシグナル伝達は、成熟miR-21の発現を急激に増加させるが、これは転写後段階への働きかけによるもので、miR-21の一次転写産物(pri-miR-21)からmiR-21前駆体(pre-miR-21)へのDROSHA(RNASENとも呼ばれる)複合体によるプロセシングが促進される。TGF-βとBMPに特異的なシグナル伝達因子SMADは、DROSHA miRNAプロセシング複合体の成分の1つであるRNAヘリカーゼp68(DDX5とも呼ばれる)と複合体を作り、pri-miR-21のところへ誘導されるが、TGF-β、BMPシグナル伝達に対する転写応答の両方にかかわる補因子SMAD4は、この過程には必要ではない。したがって、血管平滑筋細胞の表現型の制御にはリガンド特異的SMADタンパク質によるmiRNA生合成の調節が重要であり、おそらくTGF-βおよびBMPシグナル伝達系によるSMAD4に無関係な応答にもこれが重要だろうと考えられる。