Letter 生態:火山性の二酸化炭素噴出孔から明らかになった、海洋酸性化が生態系に及ぼす影響 2008年7月3日 Nature 454, 7200 doi: 10.1038/nature07051 大気中の二酸化炭素分圧(pCO2)は2100年までに産業革命以前の分圧の2倍になることがほぼ確実であり、過去数百万年のどの時期よりもかなり高くなると考えられる。海洋は人為起源のCO2の主要な吸収源の1つである。人為起源のCO2は、1900年代初めからこれまでに海洋表層におけるH+濃度を30%増加させたと推定されており、2100年までに海水のpH値を最大で0.5低下させる可能性がある。海洋の酸性度上昇が海洋生態系にどのように影響するかについては現時点ではよくわかっていないが、それは、ほとんどすべての研究が生態系の分離された各要素についてin vitroで短期間の急速な摂動実験を行ったものだったからである。本論文では、火山性のCO2噴出孔が水柱のpHを低下させている浅海沿岸域における底生生物生態系に対する酸性化の影響を示す。通常pH(8.1〜8.2)から低pH(平均7.8〜7.9、最低7.4〜7.5)までの勾配に沿って、多数の石灰生物を含む典型的な岩石海岸群集から、イシサンゴ類を欠き、ウニ類とサンゴモ類の個体数が大きく減少した群集への移行がみられた。これは我々の知る限り、これらの重要な生物群がpCO2値の上昇に影響を受けやすいという予測を生態系スケールで初めて検証したものである。海草の生産量は平均pHが7.6(1,827 µatm pCO2)の海域で最大となっており、そこではサンゴモ類の生物量が大きく減少し、炭酸イオン濃度が未飽和の状態に長年置かれていたために腹足類の殻が溶けつつあった。CO2噴出孔のある場所に生息する種は、自然状態で高いpCO2に強い抵抗力を示す生物群で構成されており、このことは、海洋酸性化が侵入性の高い非固有種の海藻にとって有利に働く可能性を示している。今回の結果は、海洋酸性化によって影響を受けやすい生物が除去された場合に浅海の海洋生物群集で起こりうる変化の様相についての、in situでの初めての手がかりとなる。 Full Text PDF 目次へ戻る