Research Press Release
天の川銀河の闇の奥
Nature Physics
2015年2月10日
今週のオンライン版に、天の川銀河内部にあるダークマターの量の見積もりが報告されている。ダークマターの測定は間接的なものであるため、天の川銀河と太陽系の全質量に対するダークマターの寄与を計算するのは難しかった。
ダークマターの量を見積もるために、Fabio Ioccoたちは最初に、天の川銀河の「回転曲線」の最新の測定結果を集め、重力の法則を通した質量と公転速度の関係を用いて、銀河中心から一定の距離にある星の速度を求めた。次に、こうした測定結果と、天の川銀河における目に見える星とガスの質量からなるバリオン物質(通常の物質)の新しい分布モデルに基づいて予測された速度を比較した。こうした2つの量の相違を用いて、天の川銀河の質量に対するダークマターの寄与が計算された。
その結果は、天の川銀河の内部にダークマターが存在することを示す有力な証拠を与えるが、その分布と性質を確定するにはさらに調べる必要がある。今回の最新の見積もりは、天の川銀河の構造と進化を明らかにするのに役立つ可能性があるだけでなく、宇宙で最も豊富な種類の物質であるダークマターの将来の探査の指針となる。
doi:10.1038/nphys3237
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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