遺伝学:ヒト染色体構造の地図
Nature
2025年12月18日
核内におけるヒト染色体の詳細な地図を報告する論文が、今週のNature にオープンアクセスで掲載される。この資料は、ヒトDNAの物理的配置が生物学的発現とどう関連しているかを理解するための基盤を提供する。
ヒトゲノムの三次元(3D)構造は、遺伝物質が生物学的反応を制御するためにどのように利用されるかを調整するうえで重要な役割を担っている。DNAは、ヒストンタンパク質の周囲にループ状に巻き付くことで核内に保存され、クロマチンと呼ばれる複合体を形成する。クロマチンの多数の部位は、生化学的に修飾され、遺伝子発現を調節することができる。この3D構造と、それが時間とともにどのように変化するか(第四次元)をマッピングする取り組みは、4Dヌクレオーム(4D nucleome)として知られている。
4D Nucleome ProjectのJob Dekkerら(マサチューセッツ大学チャン医科大学〔米国〕)は、さまざまな染色体捕捉法を用いて、ヒト胚性幹細胞と線維芽細胞(結合組織細胞)の2種類の細胞において染色体の構造を分析した。著者らは、細胞タイプごとに14万以上のクロマチンループ(DNAの複雑な構造)をカタログ化し、個々の遺伝子に対する核内環境モデルを生成した。これには遠隔の調節因子との潜在的な長距離相互作用も含まれる。異なる手法によるデータセットの統合により、著者らは各手法を比較評価し、特定の研究課題への有用性を判断できた。この共同研究はまた、ループ押し出しや相分離といったクロマチンを折りたたむ主要な物理的メカニズムが、複雑なゲノムの3次元構造を形作るためにどのように連携するかを明らかにした。これらのデータセットを組み合わせることで空間モデルが生成され、転写や複製といった遺伝的プロセスをクロマチン内の3次元的文脈に位置付け始めることが可能になりつつある。
これらの観察された構造が個々の遺伝子の機能とどう関連するか、また、この知見が遺伝性疾患との闘いにおいて活用できるかどうかを解明するには、さらなる研究が必要である。
- Article
- Open access
- Published: 17 December 2025
Dekker, J., Oksuz, B.A., Zhang, Y. et al. An integrated view of the structure and function of the human 4D nucleome. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09890-3
News & Views: Systematic maps reveal how human chromosomes are organized
https://www.nature.com/articles/d41586-025-03808-9
doi:10.1038/s41586-025-09890-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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