【惑星科学】対で旅する小惑星
Scientific Reports
2014年10月23日
スウェーデン中央部にある2つのクレーターは、約4億7000万年前に小惑星帯から離脱し、連星系になっていた1対の小惑星が作った可能性が最も高いという報告が今週掲載される。以前からこの2つのクレーターには関連があるとみられていたが、今回の研究はこの仮説を支持する新たな証拠となった。この発見により、密接に相互作用する物体が引き起こした衝突をより深く理解することが可能になり、また、クレーターの分析から連星系小惑星の性質についての手掛かりも得られる。
約4億7000万年前、小惑星帯の200km大の小惑星が衝突によって崩壊し、それが、地球の軌道と交差する軌道に多量の破片をもたらした。これまでの分析で、スウェーデン中央部の直径7.5kmのロックネ(Lockne)クレーターはこの崩壊でできた破片の地球衝突に関連していることが分かっている。また、その近くにある直径0.7kmのモリンゲン(Malingen)クレーターについての最近の研究結果は、これら2つのクレーターが密接に相互作用する破片によって形成された可能性を示唆した。
今回の研究を行ったスペイン国立航空宇宙技術研究所(マドリード)のJens Ormoらは、「2つのクレーター内の物質の地質学的分析結果は、2つのクレーターが同時にできたことを示している」と報告している。さらにOrmoらは、「クレーターの形状は、ばらばらになった破片が衝突したという仮説と矛盾せず、このため、この連星系は(多くの破片が重力によって1つになっている)ラブルパイル(破砕集積体)型小惑星だったのかもしれないと考えられる」と主張する。
地球近傍小惑星の観測によると、その約16%が対になって軌道上を進んでいるという。しかし、地球上で観測されている、対の小惑星によって同時に形成された可能性のあるクレーターのペアは少数であり、しかも、その大部分は本当にペアであるのか疑問視されている。今回の報告は、ロックネクレーターとモリンゲンクレーターは、1対の小惑星によって作られたことの証明になるとみられる。
doi:10.1038/srep06724
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
古生物学:インドで発見された化石は新属新種の古代の大蛇だったScientific Reports
-
生体力学:昆虫の翅のヒンジは筋肉によって制御されているNature
-
気候変動:気候変動に伴う経済的コストNature
-
生物学:闘争・逃走系の起源Nature
-
材料:接着剤が海洋性軟体動物種の追跡に役立つNature Communications
-
気候変動:海洋での致死的な極端低温事象の強度と頻度が高まっているNature Climate Change