気候:複合的な極端気象が炭素収支の再考を迫る可能性
Nature
2026年5月14日
炭素の排出量が増加し続けた場合、将来、複合的な極端気象現象がより頻繁に発生する可能性が高いことを報告する論文が、Nature に掲載される。この研究では、高温多湿や干ばつと高温が同時に発生する複合的極端現象の頻度が、累積二酸化炭素(CO2)排出量と関連していることが明らかになった。特に、深刻度の高い現象ほど、その発生頻度が急速に増加すると予測されている。これらの知見は、気候変動による広範な影響に対処するためには、地球温暖化を1.5℃および2℃に抑えるためのCO2排出目標を、さらに引き下げる必要があるかもしれないことを示唆している。
人為的な炭素排出に対する気候の反応は、通常、累積CO2排出量に対する気温変化を測定することで定量化される。これは、地球温暖化の目標と整合する許容可能なCO2排出量のレベルを推定するための基礎となる。しかし、この指標では気候変動の全容をとらえることはできない。高温・多湿や干ばつ・熱波といった複合的な極端現象は、社会や生態系に高いリスクをもたらす可能性があるため大きな懸念材料となっているものの、こうした複合現象が累積CO2排出量にどう反応するかは十分に解明されていない。
Yao Zhang(北京大学〔中国〕)、Zhaoli Wang(華南理工大学〔中国〕)らは、気候モデルとシミュレーションを用いて、累積CO2排出量単位あたりの月間高温・多湿複合現象の発生頻度の将来的な変化を推定した。その結果、歴史的に頻度の高い複合事象は、累積CO2排出量に比例して線形に増加する一方、よりまれで深刻な事象はより急激に増加することが判明した。累積CO2排出量に対する複合事象の反応を測定した結果、この影響は従来のモデルから推定された平均値よりも37~75%高いことが示唆されており、これにより、複合的な極端現象は既存の地球システムモデルが予測するよりも頻繁に発生することが示されている。著者らは、こうした複合現象の変化を考慮に入れると、温暖化を1.5℃および2℃に抑えるために提案されているCO2排出量よりも、さらに大幅に低い水準に抑える必要があると指摘している。著者らは、この新しい指標が、より包括的な気候政策や交渉を後押しする可能性があると結論づけている。
シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 13(気候変動に具体的な対策を)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases」をご覧ください。
- Article
- Published: 13 May 2026
Li, J., Zhang, Y., Ciais, P. et al. Enhanced response of extreme compound events to cumulative CO2 emissions. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10544-1
doi:10.1038/s41586-026-10544-1
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