Research Press Release
【がん】乳がん患者の生存に関連する遺伝的マーカー
Nature Communications
2014年6月18日
免疫関連遺伝子の多様体が、特定のタイプの乳がんによる死亡リスクを高めていることが明らかになった。今回の研究では、乳がんの予後における免疫系の重要性が明確に示され、化学療法後の乳がんの転帰の遺伝的基盤に関する手掛かりがもたらされた。その研究の詳細を報告する論文が掲載される。
これまでの研究では、同じ家族の成員の乳がんの生存率が相関しており、免疫系が、化学療法に対する患者の応答に影響して、患者の全体的な予後に影響を及ぼす可能性が明らかになっていた。
今回、Kamila Czeneたちは、免疫系と炎症に関係する遺伝子に影響を与える遺伝子多様体と乳がんの生存率との関連を調べた。今回の研究は、化学療法による治療を受けた多数のエストロゲン受容体陰性(ER)乳がん患者のグループについて行われ、免疫応答と乳房細胞の遊走と増殖に関与するケモカイン遺伝子CCL20において遺伝的マーカーが同定された。このマーカーがあると、乳がん特異的な死亡のリスクが高まる。
ただし、このマーカーは、乳がんの生存率に関連する変異のほんの一部しか説明できない。このことは、エストロゲン受容体陰性乳がんの予後の遺伝的基盤を十分に解明するためには、今回よりかなり大規模な研究を行う必要のあることを示唆している。今回の研究では、治療薬の標的となり、化学療法を受けた乳がん患者の予後を改善する遺伝子を同定することに向かって重要な一歩が記された。
doi:10.1038/ncomms5051
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