洪水のリスクファイナンス
Nature Climate Change
2014年3月3日
洪水によるヨーロッパの平均年間被害額は、今後数十年間で大幅に増加する可能性があるとの報告が、今週のオンライン版に掲載される。
2013年6月にヨーロッパ諸国に影響を及ぼし、現在英国南部の一部の地域で生じているような大洪水は、気候変動下でより多く見られるようになり、災害リスクファイナンスへの圧力が国家レベルおよびEUレベルの両方で高まると予想されている。
今回、Brenden Jongmanたちは、ヨーロッパにある河川のサブ流域からの月別ピーク流出量が、洪水リスクの優れた指標であることを明らかにした。サブ流域のピーク流出量の間に高い相関性があり、その原因は大規模な気象パターンであることが分かったのだ。これは、異なる河川で同時に流量が高くなることが多く、広範な地域で洪水の起きる恐れがあることを意味する。また、Jongmanたちは気候変動と社会経済的発展の両方に関する予測を考慮し、現在そして将来の洪水被害費用に関するモデルを作製した。コンピューターシミュレーションでは、洪水による平均年間被害額は現在から2050年までに500%増加し、2013年の大洪水で120億ユーロ(約1.7兆円)の損害をもたらしたような極端な気象事象の頻度は、この期間に倍増する可能性が示唆された。 損害の規模や分布を洪水防護対策への投資によって抑制し、損害の影響を保険の適用範囲の拡大や現在の公的補償基金の拡大によって緩和することは可能である。しかし、今回の研究結果は、これらの対策の効率や公平性、許容の意味合いが大きく異なることを示している。Jongmanたちは、ヨーロッパ諸国にとって、大洪水の発生時に財政的に支援し合うことがますます必要になる可能性があると結論づけている。
doi:10.1038/nclimate2124
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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