【神経科学】人工神経を利用して麻酔下の霊長類の四肢機能を回復させる
Nature Communications
2014年2月19日
覚醒下のサルの脳活動を解読し、その情報を用いて、一時的な麻酔下にあるサルに目標指向的運動をさせる神経デバイスについて報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、負傷によって麻痺を起こした患者のリハビリテーションにこうしたシステムを用いることの概念実証となる。
ブレイン・マシン・インターフェースについては、身体障害を負った被験者の運動制御機能を回復させる可能性を調べる研究が現在進められている。そして、この可能性がまもなく現実化するかもしれないことが、これまでの研究で明らかになっているが、現在の研究方法には、こうした被験者が、障害を受けた手足を用いて、自然に近い運動を行うという側面が欠落しているという制約があった。今回、Ziv Williamsたちは、この制約に取り組むため、脳から脊髄に至る神経プロテーゼで2匹のアカゲザルをつないだシステムを開発した。Williamsたちの新方法は、被験者をコンピューターインターフェースだけとつなぐデバイスを用いる従来の研究とは大きく異なっている。つまり、第1のアカゲザルの脳活動がコンピューターによって解読され、その情報が、麻酔下にある第2のアカゲザルの脊髄と筋肉に伝えられるのだ。Williamsたちは、第2のアカゲザルが、第1のアカゲザルから送られてきた神経シグナルをもとに、目標に向けた運動をうまく行ったと報告している。
今回得られた結果がブレイン・マシン・インターフェースを用いる既存の方法よりも優れていると判断するには時期尚早だが、Williamsたちは、その新知見によって、方法にますます磨きがかかり、消耗性の高い負傷を受けた後の機能の回復と復元をスピードアップできることを期待している。
doi:10.1038/ncomms4237
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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