Research Press Release
【医薬品化学】毒性の低い抗生物質の合成
Nature Communications
2014年1月29日
細菌に対する標的選択性が向上し、有害な副作用が少ないことが期待される新たな抗生物質が合成された。この抗生物質をもとに、従来の抗生剤より毒性が低く、有効性の高い抗生剤が開発される可能性がある。この研究成果を報告する論文が、今週掲載される。
アミノグリコシド系抗生物質は、細菌のリボソームに結合して細菌を攻撃する。リボソームは、細胞内の不可欠な機構で、タンパク質を産生する。ところが、ヒトの細胞には、ヒト独自のリボソームがあるため、この抗生物質が、ヒトのリボソームに対して、散発的な標的外結合を起こす。その結果、一部の患者に有害な副作用が生じる。今回、Erik Bottger、Andrea Vasellaたちの研究グループは、既存のアミノグリコシド系抗生物質を修飾して得られた化合物が、一般的に用いられるアミノグリコシド系抗生物質より培養ヒト細胞に及ぼす毒性が低いことを見いだした。また、この新化合物を病原性黄色ブドウ球菌に感染したマウスに投与したところ、元々の抗生物質活性が保持されることが分かった。さらに、低い毒性とともに、細菌のリボソームに対する選択性が高まり、ヒトのリボソームに対する活性は低下した。
今回の研究は、毒性の低いアミノグリコシド系抗生物質の開発に向けた重要な一歩となった。
doi:10.1038/ncomms4112
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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