Research Press Release
皮脂がT細胞を活性化する
Nature Immunology
2013年12月23日
主としてヒトの皮膚に局在するT細胞の一群が、遊離脂肪酸やワックス・エステルといった特定の皮脂(脂質)によって活性化されることが明らかになった。アトピー性皮膚炎や乾癬といった皮膚疾患には皮脂の組成変化が伴っており、今回の知見から、脂質の変化がどのような仕組みで皮膚疾患に影響するのかが明らかになるかもしれない。
皮脂は、毛包や汗腺から分泌される無極性の脂質やワックス様の物質の混合物で、通常は皮膚の表面を覆っている。Annemieke De Jongたちは、ヒトの皮脂腺が大量に生産しているこれらの無極性の脂質はCD1a拘束性T細胞を活性化するが、極性頭部を持つ脂質抗原はCD1a拘束性T細胞を阻害することを発見した。無極性脂質は主に皮膚の外側の層に限られて存在する一方、CD1aは、表皮中の抗原提示細胞で高度に発現されている。外傷や感染、皮膚バリアの損傷によって、表面の皮脂が皮膚の深層へと入り込み、これがCD1a拘束性T細胞とバリア免疫の活性化を促している可能性がある。
doi:10.1038/ni.2790
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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