Research Press Release
ナノ結晶を明るく光らせる
Nature Nanotechnology
2013年9月2日
発光輝度の高いナノ結晶を合成する手法が、今週オンラインに報告される。
アップコンバージョン・ナノ結晶は、赤外放射を可視光に変換できるため、バイオ検出、生体イメージング、太陽電池、3Dディスプレイ用として有望な材料である。アップコンバージョン・ナノ結晶の機能を高めるために、増感剤と活性化剤という2種類のイオン種がドーパントとして添加される。増感イオンが赤外放射を吸収して励起エネルギーを活性化イオンに移動させると、活性化イオンが可視光を放出する仕組みだ。ドーパントを増やすと発光輝度が高くなるが、活性化イオンの濃度がしきい値を超えると輝度は低下する。つまり、アップコンバージョン・ナノ結晶の輝度は本質的に限られているのである。
今回Dayong Jinらは、この限界を克服する方法を検討した。赤外放射量を増加させたうえ活性化イオン濃度をしきい値以上に増やすことによって、発光シグナルが著しく強くなり最高で70倍になることを見いだした。Jinらのアップコンバージョン・ナノ結晶は、肉眼で見えるほど明るく発光するので、安価なデジタルカメラでも記録できる。また、高コントラスト生体標識に用いれば、個々の細胞を追跡することができる。
doi:10.1038/nnano.2013.171
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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