【細胞生物学】米国先住民ミオパチーの解明に役立つ遺伝的手がかり
Nature Communications
2013年6月5日
特定の遺伝子の変異が、稀な染色体障害である「米国先住民ミオパチー」の原因として同定され、新たな治療標的候補が浮かび上がった。この結果を報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。
米国先住民ミオパチーは、先天性疾患の一種で、筋力低下、呼吸困難、摂食困難、発達遅滞、筋肉のけいれん、硬直、こわばりといった数多くの衰弱性の症状を示す。米国先住民ミオパチーの影響については、詳しく研究されているが、この疾患に寄与する機構については解明が進んでいない。
今回、平田普三(ひらた・ひろみ)、John Kuwadaたちは、この点に関する研究を進め、ゼブラフィッシュが遺伝的解析に適していることを利用して、米国先住民ミオパチーの原因となっている可能性のある遺伝子変異のスクリーニングを行った。その結果、ゼブラフィッシュのstac3遺伝子の変異が同定された。この遺伝子変異は、骨格筋の収縮に影響を及ぼしている。そして、Kuwadaたちは、米国先住民ミオパチー患者のSTAC3遺伝子にも類似の変異があるという重要な発見をした。
Kuwadaたちは、STAC3遺伝子の変異から米国先住民ミオパチーの発生に至る過程が、いくつかの機構を介したものである可能性を認める一方で、今回の研究が、今後の米国先住民ミオパチーの研究の基盤となり、その研究方法が、現在のところ解明されていない先天性ミオパチーの研究に役立つことを期待している。
doi:10.1038/ncomms2952
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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