【心臓病学】心臓移植における臓器提供者とのマッチングの改善
Scientific Reports
2013年5月30日
心臓の移植を必要とする患者ひとりひとりに合わせたドナー(臓器提供者)とのマッチングモデルについて記述した論文が、今週掲載される。この研究では、約6万人の心臓移植患者についての分析が行われ、臨床現場で、この新しいモデルを用いれば、最適なマッチングを選択し、最悪のマッチングを回避する能力が高まることが示唆されている。
心臓移植は、末期の心不全患者の一部にとっての主たる治療法だ。心臓移植後の生存率は、近年、顕著に伸びているが、ドナー不足という問題が続いており、ドナーとレシピエント(臓器受容者)のマッチングが最適レベルに達していないために拒絶反応やその他の問題が生じて、患者が死に至ることがある。今回、Johan Nilssonたちは、シミュレーテッドアニーニングと人工ニューラルネットワークを組み合わせて、心臓移植を必要とする患者とドナーをマッチさせる計算論的学習アプローチを考案した。この方法は、CODUSA(Customize Optimal Donor Using Simulated Annealing)と呼ばれる。Nilssonたちは、この方法を用い、年齢、性別、血液型などの要素を考慮に入れて、成人心臓移植患者59,698人を分析した。
今回の研究で得られた知見は、ドナーの年齢とのマッチングが、移植患者の長期的な生存と最も強く関連する変数であることを示唆している。CODUSAを用いて最適なプロフィールをもつドナーを見つければ、患者の生存が最大で33か月伸びる可能性があるとNilssonたちは考えている。
doi:10.1038/srep01922
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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