Research Press Release
サリドマイド復活の最新事情
Nature Medicine
2010年4月5日
サリドマイドが、血管の遺伝性疾患の治療に役立つ可能性がある。
遺伝性出血性毛細管拡張症(HTT)は血管の異形成を特徴とする遺伝性疾患で、多くの患者は鼻血を繰り返し出すが、この鼻出血は治療が難しく、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)に大きく影響する。F Lebrinたちからの報告によれば、HHT患者にサリドマイドを投与すると鼻出血の程度が軽くなり、回数も減るという。HHTの実験マウスモデルでは、サリドマイド治療により血管壁の異常が回復し、それには成長因子PDGFが関与していた。HHT患者の鼻腔面組織の生検によって、ヒトのサリドマイド治療の効果も、同じ仕組みで説明できることがわかった。
サリドマイドは、もともと1960年代に妊娠中の吐き気の治療に使われたが、新生児に重篤な先天性欠損症が出現して、市場から排除された。最近になってサリドマイドは再び日の目を見て、ある種のがんの治療に使われている。HTT患者に使用できる可能性も、この名高い薬の再評価の要因の1つになるだろう。
doi:10.1038/nm.2131
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
神経科学:COVIDパンデミックが英国の成人の脳の老化を早めることに関連するNature Communications
-
社会科学:週4日勤務制が労働者のウェルビーイングを向上させるNature Human Behaviour
-
動物の行動:犬のテレビを視聴する習慣は性格によって異なるScientific Reports
-
疫学:欧州における鳥インフルエンザ発生の主な予測因子が特定されるScientific Reports
-
素粒子物理学:CERNで観測されたつかみどころのない物質と反物質の非対称性Nature
-
古生物学:獲物に忍び寄るための古代爬虫類の特殊なヒレNature