Research Press Release
肺炎の新しいモデル
Nature Medicine
2010年9月20日
心臓細胞のミトコンドリア膜の重要な成分であるカルジオリピン(ジホスファチジルグリセロール)が、肺炎のマウスモデルで果たす役割の報告が寄せられている。今回の知見によって、カルジオリピンの量やヒトの肺炎との分子レベルでのかかわりを変化させる、新しい治療法に道が開ける可能性がある。
肺炎は感染症による死亡の主な原因の1つだが、細菌性肺炎が肺に感染して長期にわたって損傷を与える仕組みはよくわかっていない。R Mallampalliたちは、肺炎患者ではカルジオリピンレベルが上昇していることを発見した。これが肺の損傷につながっている可能性がある。
リン脂質輸送体ATP8b1がカルジオリピンに結合し、これを細胞内に引き込むことが明らかになった。カルジオリピンの取り込みができない変異型ATP8b1をもつマウスでは、肺炎患者と同様に、肺液のカルジオリピン濃度が上昇した。このATP8b1変異マウスは細菌性肺炎を起こしやすいことから、肺炎の新しい概念モデルになると考えられ、カルジオリピンが肺炎に果たす役割が明らかになった。
doi:10.1038/nm.2213
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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