Research Press Release
多発性硬化症の当て推量を排除
Nature Medicine
2010年3月29日
インターフェロン(IFN)-βは多発性硬化症の主な治療法だが、その治療効果は、病気にかかわる免疫細胞の型に応じて変わることが明らかになった。この結果は、IFN-β投与がよく効くMS患者かどうかを、治療開始前に判断できる可能性があることを示している。
IFN-βは多発性硬化症の治療に広く使われているが、いつでも必ず効果があるわけではない。その理由はわかっていなかった。L Steinmanたちは、多発性硬化症のマウスモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎を研究し、IFN-βが治療で効果をあげられるかは、病気を引き起こした免疫細胞の種類に応じて決まることを発見した。症状の原因がいわゆるTH1細胞(ヘルパーT細胞の一種)の場合にはIFN-βが有効だったが、TH17細胞(別種のヘルパーT細胞)がかかわる場合にはIFN-βは病気を悪化させた。また重要な知見として、IFN-βに反応しない多発性硬化症患者は病気がかえって悪化すること、IFN-βに反応する患者に比べてTH17細胞が作るIL-17Fという分子を高レベルにもつことも判明した。
今回の結果から、ある患者にIFN-β治療が有効かどうかを治療開始前に判定できるという可能性が浮かび、臨床的にも経済的にも重要な意味があると期待がもたれる。
doi:10.1038/nm.2110
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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