赤肉に含まれ、循環器疾患の原因となる新しい化合物
Nature Medicine
2013年4月8日
栄養素のL-カルニチンは赤肉に含まれ、サプリメント(栄養補助食品)として利用されているが、これがヒトの循環器疾患に関連し、マウスでは血管疾患を引き起こすとの報告が寄せられている。L-カルニチンの病原性は直接的なものではなく、腸内細菌による代謝が必要らしい。
Stanley Hazenたちはマウスを使って、L-カルニチンの血管疾患促進作用には、腸内細菌によるトリメチルアミン(TMA)への代謝が必要で、さらにこれがトリメチルアミンN-オキシド(TMAO)へと変換されることを突き止めた。ヒトでも同様に、L-カルニチンはTMA、さらにTMAOへと代謝される。ベジタリアン(菜食主義者)やヴィーガン(完全菜食主義者)では雑食のヒトに比べるとL-カルニチン代謝能力が低下しており、特定の腸内細菌も減少していることから考えると、赤肉を摂取すると、L-カルニチンをエネルギー源として利用できる腸内細菌が増殖しやすくなることがわかる。さらにHazenたちの報告によれば、血中のL-カルニチン濃度の高さと循環器疾患には関連があるが、それはTMAOレベルも高いヒトに限られるという。これは、L-カルニチンが病気に結びつくためには腸内細菌によって代謝される必要があるとの見方によく符合する。
これらの結果は、赤肉の摂取と循環器疾患とを結びつけている要因は、飽和脂肪酸やコレステロールではなく、むしろL-カルニチンであることを示している。L-カルニチンはサプリメントとして幅広く利用されているため、この知見は重要であり、著者たちはL-カルニチンの利用の安全性について、もっと詳しく調べるべきだと述べている。
doi:10.1038/nm.3145
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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