Research Press Release
【動物学】配偶者を愛しつつ浮気もするゲラダヒヒ
Nature Communications
2013年2月13日
自然環境に生息する霊長類による戦術的欺瞞を初めて記述された。
野生のゲラダヒヒの場合、交尾相手をめぐる競争が常に存在し、そのことが、ゲラダヒヒの適応度に非常に大きな意味をもっている。自らの繁殖成功度を最大限高めるために交尾相手を「だます」個体は、それがばれないように自らの行動を変化させるという学説が提唱されているが、こうした欺瞞的行動を裏づける証拠は非常に少なかった。今回、A Le Rouxたちは、エチオピアに生息する野生のゲラダヒヒの集団の長期的観察データを用いて、この仮説を評価した。ゲラダヒヒは、随意に制御された交尾声を出すことで知られている。今回の研究では、特定の雄と雌が、リーダーの雄の位置にじっと注目しながら、交尾発声を抑制して、不貞行為を隠ぺいしようとしていたことがわかった。情報発信の抑制は、信号の積極的改ざんよりも単純な形態の欺瞞と考えられているが、Le Rouxたちは、このように実際の聞き手に対応して発声を調整するという行動は、生殖行為の隠ぺいが戦術的に用いられている可能性を示唆していると考えている。
今回の研究で明らかになったゲラダヒヒの欺瞞は、さまざまな行動戦略のコストと利得の解明を深めるばかりでなく、ゲラダヒヒの社会的行動の認知的基盤の評価をさらに進め、そのほかにも高次の故意性のような認知技能の研究にも道を開いた。
doi:10.1038/ncomms2468
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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