気候変動の経験と気候変動に関する考え方の関係
Nature Climate Change
2012年12月3日
米国人の地球温暖化の解釈が個人的経験と既存の信念によって影響されていることを明らかにした論文が、今週掲載される。「経験に基づく学習」という仮説では、直接的な経験が気候変動の認識を高めることが示唆されているのに対して、「動機付けられた推論」という理論は、強い信念が個人的経験の実感に影響する点に焦点を合わせている。今回の米国での研究は、この2つの仮説が対立関係にあるのではなく、いずれも正しいことを示している。
T Myersたちは、米国人の全国代表サンプルに対するインタビューを2008年と2011年に行って、米国人の気候変動に関する信念に関する評価を行った。Myersたちは、時間の経過による応答の順序を利用した方法を用いて、個人的経験の実感が信念の確信性を高めるのか、あるいはその逆なのかを調べた。そして、Myersたちは、個人的経験と信念の確信度が、お互いに影響を与え合うことを報告している。
また、Myersたちは、動機付けられた推論が起こるのは、主に、地球温暖化問題にすでに大きく関与している人々の間であることも見いだした。これに対して、あまり関与していない人々の間では、経験に基づく学習が起こることもわかった。これは、重要な結果と言える。現在、75%の米国人は気候変動への関与が低いからだ。さらに、Myersたちは、人々が身体的に経験する方法で気候変動の地域的影響を明確に示すような気候変動教育戦略が米国で成功する可能性があるという見方を示している。
doi:10.1038/nclimate1754
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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