Research Press Release
【材料科学】ナノスケールで弾丸を止める
Nature Communications
2012年10月31日
厚さがわずか数センチメートルの構造化された軽量ナノ複合材料が、秒速300メートル以上で打ち込まれた弾丸を止められることが判明した。これは、ケブラーや鋼などのバルク材料より相当に優れた性能といえる。それなのに、ナノスケールで、この複合材料の高速での衝撃に対する応答の仕方を詳しく調べる研究は、ほとんど進んでいない。このほど、防弾材料の構造が性能に与える影響に関する新たなデータが得られ、Nature Communicationsで発表される。
複合材料の特性は、そのナノスケールの構造によって決まるという考え方が示されているが、通常の弾丸は、それより数百万倍も大きいため、弾道衝撃を受けた複合材料の挙動を研究することが難しくなっている。今回、E Thomas たちは、こうした困難に取り組むため、ゴム様ポリマー層とガラス様ポリマー層が交互に形成された厚さ数ナノメートルの複合材料を作製し、高出力のレーザーを用いて、直径3.7マイクロメートルのシリカビーズを打ち込んだ。その結果、最大秒速4キロメートルで移動するビーズによる衝撃で各層が変形する過程を示した詳細な画像が得られた。今回の研究結果は、複合材料の各層を弾丸の入射経路に対し垂直に配置することで、複合材料の性能が最大30%改善されることを示している。
doi:10.1038/ncomms2166
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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