一目で病気を診断できる
Nature Nanotechnology
2012年10月29日
肉眼で数分子の疾患バイオマーカーを選択的に検出できるシグナル発生機構が、今週のNature Nanotechnology電子版に報告されている。こうしたバイオセンサーは、医療資源に制約のある国々での疾患診断に非常に役立つ可能性がある。
一般的な医療診断用分析手段として、従来型のサンドイッチ酵素結合免疫吸着法(ELISA)がある。この分析法では、まず基板に固定された捕捉抗体が標的分子と結合し、次に捕捉抗体と結合した状態の標的分子が一次抗体によって認識・結合され「サンドイッチ」を形成する。続いて、一次抗体に酵素結合二次抗体が結合すると、基質が酵素によって着色分子に変換されるため、標的分子の検出が可能になる。つまり、色の強さから標的分子の濃度がわかる仕組みである。しかし従来型ELISAの場合、肉眼で確信を持って着色溶液と非着色溶液を区別できるのは、標的分子の濃度が高いときだけである。
Molly StevensとRoberto de la Ricaは、標的分子の濃度が非常に低くても肉眼で識別できるよう、二次抗体と結合した酵素を用いて、過酸化水素の存在下で金ナノ粒子の成長を調節した。すなわち、標的分子が存在しない場合、過酸化物による金イオンの還元が高速で起こり、非凝集金ナノ粒子が形成されるので、溶液は赤色になる。逆に、標的分子が存在する場合、還元速度が低いため凝集ナノ粒子が生じ、溶液は青色になる。論文著者らは、この手法を利用することにより、一般的な検査法では検出できないほど非常に低い濃度(1ミリリットル当たり1アトグラム)の前立腺特異抗原とHIV-1抗原p24をヒト全血清から検出している。だが、この手法は本質的に標的分子濃度の定量に適さないという欠点がある、とStevensとde la Ricaは注意を促している。
doi:10.1038/nnano.2012.186
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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