Research Press Release
【金融ネットワーク】金融危機が起こると株式ポートフォリオがリスク分散に役立たなくなる理由
Scientific Reports
2012年10月18日
複雑系における相関の解明は、乱れに直面したときに重要な意味をもつ。複雑系の一例が、金融システムで、この場合には、金融危機が乱れに当たる。金融トレーダーは、一つの銘柄の株式だけを保有することに内在するリスクを減らそうとして、株式ポートフォリオを構築する。ポートフォリオに含まれる各銘柄の日々の株価変動が完全に同期する傾向がないため、リスクが低くなるのだ。今回、T Preisたちは、1939年3月から2010年の年末までのダウ・ジョーンズ工業株30種平均に含まれる銘柄の毎日の終値を解析した。その結果、市場に損失が生じている時期には、ポートフォリオを保護すると考えられている分散効果が破綻することが判明した。ポートフォリオの保護が最も重要となる時期であるにもかかわらず、である。
この新知見は、金融市場で著しい損失が生じているときに株式ポートフォリオにおける分散効果の破綻を予想するうえで役立つ可能性があり、これによって、潜在的リスクの評価の精度を向上させられるかもしれない。
doi:10.1038/srep00752
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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