Research Press Release
SIV弱毒生ワクチンの効果の予測
Nature Medicine
2012年9月10日
血中のT細胞応答よりも、リンパ節でのT細胞応答の方が、サル免疫不全ウイルス(SIV)の弱毒生ワクチンの効果を良く予測できるとの報告が寄せられている。この発見は、HIVワクチン開発にも当てはまるかもしれない。
SIV弱毒生ワクチンは、アカゲザルを野生型SIV感染から完全に守る効果があるが、ヒトのHIVワクチンのひな型として利用するには安全性が不十分である。しかし、SIVワクチンの防御作用に対するアカゲザルの免疫応答を解明することは、HIVワクチン開発に向けた知識をより深めるために重要である。
ウイルスに対してワクチンが引き起こす防御反応には、血中での抗体応答や細胞性応答が関係する場合が多い。しかしLouis Pickerたちは、SIV弱毒生ワクチンがもたらす防御作用にはリンパ節中でのSIV特異的T細胞応答が関係していることに気付いた。また、T細胞による防御応答には、リンパ節中の濾胞ヘルパーT細胞での持続的な複製がともなっていた。このことから示唆されるように、野生型ウイルスによる感染を十分に制御できる強度のエフェクター応答を誘発するには、リンパ組織中に抗原が持続的に存在する必要があるのかもしれない。著者たちは、ワクチンによるHIVの制御を実現するためには、最初にウイルスと出会った組織内でエフェクター記憶応答を誘発する必要があると考えている。
doi:10.1038/nm.2934
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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