Research Press Release
【紫外線】日焼けのさらなる問題点
Nature Communications
2012年6月7日
悪性黒色腫は紫外線曝露によって発症する場合があるが、この場合に皮膚の色素沈着の程度に依存する場合と無関係な場合のあることを報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。この研究結果は、皮膚がんと太陽光放射の関係について新たな手がかりをもたらしている。
悪性黒色腫は、遺伝的な素因をもつ人が日光浴や日焼けマシーンで紫外線に曝露することに関連した疾患だが、皮膚がんにおいて特定波長の紫外線エネルギーが果たす役割は十分に解明されていない。
今回、E De Faboたちは、実験用の紫外線照射システムを設計し、それと紫外線誘発黒色腫のトランスジェニックマウスモデルを用いて、黒色腫における長波長紫外線(UVA)と中波長紫外線(UVB)の役割を調べた。その結果、UVAの特徴的なDNA損傷作用が生じるためにはメラニン色素が必要だが、UVBのDNA損傷作用にはメラニンが必要でないことが判明した。
色白の肌はUVBの影響を受けやすいが、日焼けによる刺激でメラニンが産生された場合には、UVAの影響も受けやすくなる可能性がある、とDe Faboたちは結論づけている。今回の研究で得られた知見は、日焼けの安全基準を見直す必要性があるかもしれないことを明確に示している。
doi:10.1038/ncomms1893
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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