Research Press Release
腫瘍免疫に役立つDNAの隠匿
Nature Immunology
2012年7月30日
腫瘍細胞が、どのようなしくみで常に免疫応答の一歩先を行くのかが明らかになった。
Masahisa Jinushiたちは、腫瘍に関連する樹状細胞(DC)に着目し、Tim-3とよばれる分子が大量に含まれることを発見した。DCは通常、免疫応答の活性化に重要な役割を果たし、腫瘍の破壊に関与する。しかしDCは、Tim-3を発現しているときには、逆に免疫応答を抑制するという。化学療法薬は免疫系と協力して作用するが、それは、化学療法薬が腫瘍細胞を殺すと、この細胞からDNAが放出されてDCを活性化し、抗腫瘍応答を引き起こすからである。しかしTim-3は、免疫刺激作用をもつDNAに結合してこれを隔離し、DCが活性化されるのを防ぐ。著者たちは、癌のマウスモデルでDCに関連したTim-3がDNAに結合するのを防ぐと、抗腫瘍応答が促進されることを明らかにした。
癌であっても効率のよい免疫応答を誘発できる新しい方法が、この研究から示唆される。
doi:10.1038/ni.2376
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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