Research Press Release
【行動】オオカバマダラの進路決定で2本の触角が果たす役割
Nature Communications
2012年7月18日
北米東部に生息するオオカバマダラ(Danaus plexippus)の渡りの際に、2本の触角の概日リズムが統合されて、飛翔経路上の誘導を行っていることが明らかになった。この新知見は、正確な太陽コンパス定位と渡りのために2本の触角が不可欠なことを明確に示している。この結果を報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。
オオカバマダラの触角は、渡りに重要なことが知られている。こうした触角には、渡りを成功させるために必要なタイミング成分である光感受性の概日時計が存在している。ただ、渡り中の正確な太陽コンパス定位における触角相互の関係は明らかになっていなかった。
今回、S Reppertたちは、この関係を詳しく調べるため、オオカバマダラの無傷の触角のうちの1本を黒く塗り、もう1本には無色透明の塗装を施した。すると、太陽コンパス定位と渡りが阻害され、時計遺伝子の発現も阻害された。次に、黒く塗られた触角を取り除くと、コンパス定位と概日時計遺伝子の発現が回復した。このことは、それぞれの触角で起こっている事象には独立性があるが、そこからの出力が統合されて、正確な太陽コンパス定位と渡りができるようになっていることを示唆している。
doi:10.1038/ncomms1965
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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