Research Press Release
脳の幹細胞が腫瘍に対抗
Nature Medicine
2012年7月23日
マウスやヒトに、神経前駆細胞(NPC)から分泌される特殊な脂肪酸分子バニロイドがかかわる抗腫瘍経路があるとの報告が寄せられている。
神経前駆細胞は若齢の動物の脳に見られ、脳腫瘍のところへと誘導され、癌細胞の細胞死を引き起こす因子を分泌する。
Rainer Glassたちは、分泌される因子がバニロイドであると同定し、これが脳を腫瘍から守るしくみを明らかにした。バニロイドは、悪性神経膠腫(脳の癌)でさかんに発現されているバニロイド受容体TRPV1を介して情報伝達し、腫瘍細胞のストレス経路を活性化して細胞死を引き起こす。脳腫瘍をもつ成体マウスにアルバニルと呼ばれる合成バニロイドを投与すると、若いNPCがもつこのような腫瘍抑制作用を再現できた。
これらの知見は、NPCの量によっては脳の内在性分子によるもっと強い腫瘍抑制作用が得られる可能性を示唆しており、このことは年代の異なる患者にとって大きな意味をもつかもしれない。今回の知見により、バニロイド-TRPV1情報伝達経路が、脳腫瘍の薬物治療の標的候補の1つになることが判明した。
doi:10.1038/nm.2827
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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