Research Press Release
消去法で排除する
Nature Chemical Biology
2012年7月9日
遺伝子のオン・オフを行う仕組みを調節する経路に関する洞察が、今週のNature Chemical Biology(オンライン版)で示される。
後生的な経路は、遺伝子およびその遺伝子に関連するタンパク質の分子標識のレベルおよび種類を制御することにより、遺伝子発現を調節することができる。小さな「メチル」基が遺伝子本体またはその近傍に付加される「DNAメチル化」は、幹細胞およびがんの重要な後生的経路である。メチル基をDNAに装着する経路はかなり解明されているが、メチル基をDNAから除去する「DNA脱メチル化」の仕組みは依然として不明である。DNA脱メチル化では、DNAのシトシン塩基をウラシル塩基に転換することが知られているデアミナーゼ酵素が中心的な役割を担っている、とするモデルが提唱されている。
Rahul Kohliたちは、そのような後生的標識を含むDNA配列にデアミナーゼ酵素が作用することができるのかどうかを、生化学的な方法で検討した。その結果、標識された配列は試験管内でも細胞内でもデアミナーゼの基質になりにくいことがわかり、デアミナーゼが関与するDNA脱メチル化経路の蓋然性は、ほかに提唱されているモデルほど高くない、という結論が導かれた。この発見により、遺伝子発現を制御するこの重要な調節経路を解明するための研究が再び活発化すると考えられる。
doi:10.1038/nchembio.1042
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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