量子ドットの毒性の問題に取り組む
Nature Nanotechnology
2012年5月21日
量子ドットは、イメージングやセンシング用として生物医学研究に使用されているが、重金属成分を含んでいる場合があるため、毒性に関する懸念が高まっている。重金属を含む量子ドットを非ヒト霊長類に注射した試験的研究が、今週のNature Nanotechnology電子版に報告されている。量子ドットに急性毒性はないようだが、化学分析によって、90日後も初回投与量のほとんどが肝臓、脾臓、腎臓に留まっていることが明らかになった。したがって、これらの重金属が最終的にどうなるのかについて調べるため、また霊長類における重金属の影響や持続性を究明するため、もっと長期間にわたる研究が必要である。
過去の研究からは、重金属含有量子ドットの細胞毒性に関して相反する情報が得られてきた。つまり、細胞培養では毒性が示されたが、小動物では影響が様々であった。今回の試験的研究では、Paras N. Prasadらが、イメージングに適した濃度の量子ドット(カドミウム-セレン、カドミウム-イオウ、亜鉛-イオウ)をリン脂質ミセルに封入して、6匹のアカゲザルに注射している。
今回の研究結果は、これらの量子ドットの生体内での急性毒性が最小限に抑えられている可能性があることを示唆している。このことは、実験中、血液と生化学的マーカーが正常範囲内にとどまっているという事実から明らかである。90日後の主要臓器の組織構造に異常は見られなかったが、長期影響を究明するためにさらなる研究が必要である。
doi:10.1038/nnano.2012.74
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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