Research Press Release
加齢に関連した歯周炎を直す手がかり
Nature Immunology
2012年3月26日
高齢の人ほど歯周炎(歯を支える骨を失う原因につながる炎症性疾患)を発症しやすくなるが、おそらく他の慢性炎症性疾患も含め、その理由が明らかになった。今回の知見から、歯周病に関連した破壊的炎症応答を抑制する治療法が示唆される。
歯周炎の特徴は、免疫細胞の一種で主として微生物の存在に応答する好中球が慢性的に動員されていることである。好中球は微生物のいる組織に毒性分子を放出するが、局所的に組織を損傷してしまうこともある。
George Hajishengallisたちは、若いマウスではDel-1とよばれる分子が好中球の動員を抑えるが、年をとったマウスほど、歯肉で発現するDel-1の量が少なくなることを発見した。Del-1欠失マウスでは、自然に歯槽骨の著しい骨吸収が起こり、口腔内細菌に応答する活性化好中球数が増加した。高齢のマウスで歯肉に局所的にDel-1を注入すると、歯周炎と骨吸収を防ぐことができた。また、ヒトの歯周炎患者でも同様に、Del-1発現との逆相関関係が見られる。
doi:10.1038/ni.2260
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
化石:最も古く知られている「爬虫類」の足跡Nature
-
惑星科学:月内部の非対称性を示す証拠Nature
-
古生物学:「シカゴ」始祖鳥が、この古代鳥に新たな知見をもたらすNature
-
理論物理学:二体問題を解くNature
-
がん:乳がん治療薬の臨床試験で生存率の向上が示されたものの、がんの消失は限定的であったNature Communications
-
Nature Scientist at Work コンペティションの受賞者の発表Nature