Research Press Release
赤外光が細胞膜の電気容量を増やす
Nature Communications
2012年3月14日
赤外パルスレーザー光には神経細胞を刺激する作用があるが、この作用は、細胞膜の電気特性を変化させることで生じることが明らかになった。今回の研究は、赤外光が化学物質による前処理や遺伝的前処理なしに細胞を刺激する過程に関する新知見をもたらしており、これによって生物医学研究での赤外光の利用が促進されるかもしれない。その詳細を報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。 赤外光のパルスによって神経を刺激できることは動物実験によって明らかになっているが、その過程は謎に包まれていた。今回、F Bezanillaたちは、カエルの卵母細胞と哺乳類の細胞を刺激する実験を行って、赤外光が電流を誘起し、この過程に水が必要なことを明らかにした。Bezanillaたちは、溶液中における赤外光の影響を調べ、赤外光による溶液の温度上昇を確認したうえで、生きている細胞内で水分が加熱される可能性が高いという考え方を示した。さらに、Bezanillaたちは、人工細胞膜を用いた実験で、赤外光による刺激が、細胞膜に蓄えられた電気的位置エネルギー量を変化させることを明らかにした。 この新知見で、赤外光が神経細胞を電気的に刺激する過程を説明する機構が浮上したが、脳機能と心臓細胞を刺激する際の赤外光の利用に関する今後の研究を促進させる可能性もある。
doi:10.1038/ncomms1742
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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