Research Press Release
ニーマン・ピック病の背後にあるカルシウムチャネルの問題
Nature Communications
2012年3月14日
患者の細胞に蓄積する脂質によって細胞内のカルシウムチャネルが阻害されることが、ニーマン・ピック病の背後にある機構だとする見解が発表された。この研究成果を報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。今回の研究は、脂質の蓄積と細胞の異常な働きとの分子的つながりを明らかにし、ニーマン・ピック病やそれに関連したリソソーム蓄積症の新たな治療法の開発に役立つ可能性がある。 リソソームは、さまざまな分子を分解するため、細胞のリサイクルセンターとして機能している。ニーマン・ピック病やそれに類似した50種以上の遺伝性疾患の場合には、細胞内のリソソームにスフィンゴミエリンのような分子が蓄積する。この蓄積が引き起こす結果の一つが、細胞内のカルシウムイオンのハンドリング異常だ。今回、H Xuたちは、ニーマン・ピック病患者の皮膚細胞で、リソソームのカルシウムチャネルであるTRPML1の活性が低下していることを見出した。このTRPML1阻害の原因は、リソソームに蓄積したスフィンゴミエリンだった。また、Xuたちは、培養細胞で、ニーマン・ピック病患者の遺伝的異常のために欠損した酵素を再活性化したところ、TRPML1の活性が上昇した。 今回の研究は、TRPML1の活性化がニーマン・ピック病やそれに関連したリソソーム蓄積症の新たな治療法となる可能性を示唆している。
doi:10.1038/ncomms1735
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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