宿主によるHIV感染制御
Nature Communications
2012年3月7日
一部の患者において、宿主の要因が、HIV-1感染におけるウイルス量の制御に何らかの役割を果たしていると考えられることが、今週、Nature Communicationsに掲載されるJ Blanksonたちの論文によって明らかになった。この研究では、2人の患者(1人はウイルス量が非常に少なく、もう1人のウイルス量は検出レベル以下)のウイルス複製に異常のないことがわかった。Blanksonたちは、血流中のHIV-1の量を制御しているのがウイルスの異常ではなく、患者自身の要因だと考えている。 非常に少ないウイルス量を維持するHIV-1の患者はヴィレミックコントローラー(viremic controller)と呼ばれ、ウイルス量が検出レベル以下のHIV-1感染者はエリートサプレッサー(elite suppressor)と呼ばれる。この2つのタイプの患者がウイルス量を低レベルに維持する過程は未解明だが、ウイルスの異常によって起こるとする学説が示されていた。今回、Blanksonたちは、エリートサプレッサーとヴィレミックコントローラーについての研究を行い、これらの患者から見つかったウイルスは、培養細胞中で増殖できることが明らかにして、これらの患者におけるウイルスに複製異常があるとする学説に異議を唱えている。この2種類の患者には、HIV疾患の進行を遅らせることが知られたCCR5遺伝子の遺伝的変異はなかった。今回得られた知見は、患者の何らかの要因でウイルス量が制御されていることを示唆しているが、その要因が何なのかは明らかでない。
doi:10.1038/ncomms1697
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
化石:最も古く知られている「爬虫類」の足跡Nature
-
惑星科学:月内部の非対称性を示す証拠Nature
-
古生物学:「シカゴ」始祖鳥が、この古代鳥に新たな知見をもたらすNature
-
理論物理学:二体問題を解くNature
-
がん:乳がん治療薬の臨床試験で生存率の向上が示されたものの、がんの消失は限定的であったNature Communications
-
Nature Scientist at Work コンペティションの受賞者の発表Nature