気候変動:ムンバイにおける異常降雨に関連した不均衡な死亡率
Nature
2025年11月13日
インドの沿岸大都市ムンバイにおける過剰な降雨と洪水は、モンスーン期における同市全体の死亡者数の約8%を占めているかもしれないことを報告する論文が、Nature に掲載される。子供、女性、およびスラム居住者は、特に深刻な影響を受ける傾向にある。この発見は、都市の拡大が進む地域における適切なインフラ投資の重要性を明らかにしている。
降雨と洪水は、都市住民にとって脅威であり、排水設備の不備といった不十分なインフラは異常気象の影響を増幅させる。気候変動が進行し、洪水リスク地域への人口集中が進む中、降雨、海面上昇、および公衆衛生の関連性を理解することはきわめて重要である。
Tom Bearparkら(プリンストン大学〔米国〕)は、2006年から2015年までのムンバイにおける死亡記録と降雨データを分析し、過剰降雨(例えば150ミリメートルの降雨日)や洪水後の死亡率を測定した。その結果、平均的なモンスーン期における死亡の約7.3~8.6%が降雨に起因し、これは年間約2,308~2,718人の命の損失に相当することが判明した。降雨量150ミリメートルの日が訪れると、その後5週間のムンバイにおける一般死亡率が2.2%上昇し、これはデング熱、マラリア、および腸チフスなどの洪水関連感染症の拡大が影響している可能性が高い。
降雨量150ミリメートルの降雨イベント後5週間における死亡率上昇の相対リスクは、5歳未満の幼児(5.3%)が年長者に比べ最も高く、女性(3.1%)が男性(1.5%)より高かった。極端な降雨に関連する死亡の80%以上は、非公式のスラム居住区に住む人々で発生した。また、高潮時と干潮時における極端な降雨後の死亡率の差異も推定された。降雨が干潮時に発生した場合、高潮時と比較して降雨による5週間死亡率の上昇幅は小さかった。著者らは、高潮時には排水システムの能力が低下するためと推測している。
著者らは、この知見が発展途上都市部における排水、衛生、および廃棄物管理インフラの改善への投資が緊急に必要であることを強調していると結論づけている。
シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 11(住み続けられるまちづくりを)およびSDG 13(気候変動に具体的な対策を)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases」をご覧ください。
- Article
- Published: 12 November 2025
Bearpark, T., Rode, A. & Patankar, A. Mortality impacts of rainfall and sea-level rise in a developing megacity. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09730-4
News & Views: Extreme rainfall poses the biggest risk to Mumbai’s most vulnerable people
https://www.nature.com/articles/d41586-025-03453-2
doi:10.1038/s41586-025-09730-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
人工知能:数学競技でメダル級のAIシステムNature
-
気候変動:ムンバイにおける異常降雨に関連した不均衡な死亡率Nature
-
加齢:多言語使用は老化の加速を防ぐかもしれないNature Aging
-
バイオテクノロジー:超音波がマウスの脳卒中後の脳内残留物を除去するのに役立つNature Biotechnology
-
考古学:デジタル地図によりローマ帝国の道路網が10万キロメートル増えるScientific Data
-
神経科学:時間の経過とともに発達する脳の変化を解明するNature
