気候変動:2100年までに世界的に深刻な水不足が発生するかもしれない
Nature Communications
2025年9月24日
気候変動による深刻な水不足のリスクは、2100年までに干ばつ多発地域のほぼ4分の3(74%)に影響を与えると予測されることを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載される。本研究は、この種の推定としては初のものであり、水不足のホットスポットが2020年代から2030年代にかけて地中海地方、南部アフリカ、および北米の一部に現れる可能性が高いと報告している。
降雨の長期的な不足、河川流量と貯水池の水位の低下、および水使用量の増加が相まって、極端な水不足現象、通称Day Zero Drought(DZD;デイ・ゼロ干ばつ)を引き起こす。気候変動が多くの地域の水システムに影響を与えることは既に確立されているが、深刻な水不足がいつ、どこで発生するかは現時点で不明であり、水不足への備えを計画する能力は限定的である。
Christian Franzke(釜山大学校〔韓国〕)、Vecchia Ravinandrasanaらは、大規模な気候モデル集合に基づく確率論的枠組みを用いて、人為的気候変動によるDZD事象の発生時期と発生確率を評価し、世界の水不足の特徴を分析した。高排出シナリオ下では、21世紀末までに、主要な貯水池を有する地域を含む干ばつ多発地域の74%が、深刻かつ持続的な干ばつの高リスクに直面する。これらの地域の約35%は、2020年から2030年の間に深刻な水不足に直面するかもしれない。著者らはさらに、産業革命前比1.5℃の温暖化下では、地中海地域などの都市部4億6,700万人を含む7億5,300万人が極度の水不足にさらされる可能性を予測している。さらに、将来のDZDイベントの間隔がイベントの持続期間よりも短くなる可能性があり、これにより地域の干ばつからの回復能力が制限され、水不足リスクがさらに悪化するとの警告を発している。
なお、著者らは、干ばつ時の緩衝役としての地下水の役割を考慮していないものの、これらの知見は統合的な水管理の緊急性を強調している。著者らは、気候変動リスクと持続不可能な水利用に対処するための積極的な政策立案の必要性を訴えている。
- Article
- Open access
- Published: 23 September 2025
Ravinandrasana, V.P., Franzke, C.L.E. The first emergence of unprecedented global water scarcity in the Anthropocene. Nat Commun 16, 8281 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-63784-6
doi:10.1038/s41467-025-63784-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
生態学:米国河川における魚類の生物多様性の変化Nature
-
地質学:サントリーニ島で最近発生した地震は共通のマグマによって説明できるかもしれないNature
-
古生物学:新種の肉食恐竜が白亜紀後期のアルゼンチンを支配していたNature Communications
-
気候変動:2100年までに世界的に深刻な水不足が発生するかもしれないNature Communications
-
健康:ヨーロッパにおける熱関連死の調査Nature Medicine
-
古生物学:南米の琥珀層に古代昆虫が「ひしめき合う」Communications Earth & Environment