古生物学:南米の琥珀層に古代昆虫が「ひしめき合う」
Communications Earth & Environment
2025年9月19日
南米で初めて、昆虫が保存された琥珀の堆積物がエクアドルの採石場で発見されたことを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルCommunications Earth & Environment に掲載される。この発見は、超大陸ゴンドワナ(Gondwana)に存在した1億1,200万年前の森林の断片を捉えており、現在ほとんど知られていない古代生態系を研究する新たな可能性を示す。
琥珀(樹液の化石)の試料は、年代範囲が広く、最古のものは3億2,000万年前と推定されるが、白亜紀(1億4,310万年前~6,600万年前)の1億2,000万年前から7,000万年前にかけて、化石記録中の琥珀標本の数が著しく増加している。琥珀には、生物包有物(bio-inclusions;樹脂内に保存された古代の植物や動物の物質)が含まれることがあり、昆虫や花など、通常は保存されにくい生物を研究することができる。しかし、これまで確認された主要な琥珀鉱床のほぼすべてが北半球に分布していた。そのため、現代の大陸が超大陸ゴンドワナから分離しつつあった白亜紀における南半球の生物多様性や生態系については、限られた理解しか得られていなかった。
Xavier Delclòsら(バルセロナ大学〔スペイン〕)は、エクアドルのゲノヴェーヴァ採石場(Genoveva quarry)から採取した琥珀と周囲の岩石を分析した。約1億1,200万年前の琥珀は、エクアドルのオリエンテ盆地(Oriente Basin)に広がる堆積岩層「ホリーン層(Hollín Formation)」で最近発見された鉱床の一部である。著者らは、2種類の琥珀を同定した:樹脂産生植物の根の周囲で地下に形成されたものと、樹脂が空気に触れて形成されたものである。分析した60点の空気に触れた琥珀試料からは、21種の生物包有物が確認された。これには双翅目(Diptera;ハエ類)、甲虫目(Coleoptera;カブトムシ類)、膜翅目(Hymenoptera;アリ・スズメバチ類を含む)を含む5目昆虫に加え、クモの巣の断片が含まれる。また、岩石試料からは胞子、花粉、およびその他の残骸など多様な植物化石も同定された。
著者らは、生物包有物と周囲の化石の特徴から、この琥珀がゴンドワナ大陸南部に位置し、樹脂を分泌する樹木が優勢な、湿潤で植生が密な森林環境で形成されたと結論づけている。著者らは、この琥珀鉱床の発見が、この時代の将来の研究にとって極めて重要であると主張している。
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- Open access
- Published: 18 September 2025
Delclòs, X., Peñalver, E., Jaramillo, C. et al. Cretaceous amber of Ecuador unveils new insights into South America’s Gondwanan forests. Commun Earth Environ 6, 745 (2025). https://doi.org/10.1038/s43247-025-02625-2
doi:10.1038/s43247-025-02625-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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