動物学:タコはあらゆる作業に最適な腕を前面に出す
Scientific Reports
2025年9月12日
タコはどの腕でも作業を行えるが、特定の作業には特定の腕、あるいは複数の腕を使う傾向があることを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルScientific Reports に掲載される。この発見は、タコが示す複雑な行動の一端をさらに解明するものである。
タコの腕は、中枢神経を囲む4つの独立した筋肉群(横筋群、縦筋群、斜筋群、および環状筋群)からなる複雑な構造をしている。これらの筋肉群により、腕は多様な変形が可能となり、狩りや移動から自己防衛にいたるさまざまな行動に用いられる。しかし、野生のタコが腕をどのように使用し調整しているかについてはほとんど知られていなかった。
Chelsea Benniceら(フロリダ・アトランティック大学〔米国〕)は、2007年から2015年にかけて大西洋とカリブ海で撮影された野生タコの1分間の動画を25本分析した。撮影対象はチチュウカイマダコ(Octopus vulgaris)または近縁種であるOctopus insularisもしくはOctopus americanusであった。著者らは、タコが15種類の異なる行動(這うなど)を行う際にどの腕が使用されたかを記録した。また、行動中に発生した12種類の異なる腕動作(巻き込むなど)の組み合わせと、各腕動作を実行するために発生した4種類の異なる変形(伸長するなど)の組み合わせも記録した。
著者らは、すべてのタコが8本の腕を4種類の異なる方法で変形させることができ、各腕ですべての動作を実行できることを発見した。また、体の両側の腕は均等に使用されるが、前方の4本の腕は後方の4本の腕よりも有意に使用頻度が高い(64%対36%)ことも判明した。前腕は周囲の探索に、後腕は移動に用いられる傾向が強い。その結果、後腕で頻繁に行われる動作が2つある:腕を海底に沿ってタコの体下方にコンベアベルトのように動かす「ロール(転がる)」と、腕を真っ直ぐ下方に伸ばして体を持ち上げる「スティルト(支柱のように立てる)」である。
著者らは、本研究が特定の作業に特定の手足を使う行動がタコでも見られることを初めて明確に示したものであり、これはこれまで主に霊長類や齧歯類、魚類のみでよく知られていた現象だと指摘している。さらにこの知見が、タコの腕機能を模倣したロボットアームの改良に活用できるかもしれないと述べている。
doi:10.1038/s41598-025-10674-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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