Research Press Release
合成マスト細胞顆粒
Nature Materials
2012年1月23日
マスト細胞顆粒の機能を再現・増強するサブマイクロメートルのポリマー粒子が設計・利用されたことについて、Nature Materials(電子版)に報告される。この合成顆粒は、ワクチン接種時にインフルエンザの血球凝集素抗原とともに用いると、適応免疫応答を増強し、致死量のH1N1型インフルエンザウイルスを注射したマウスの生存率を高める。 マスト細胞は、腫瘍壊死因子(TNF)などの炎症性メディエーターを含む不溶性顆粒を放出することにより、免疫応答を増強するよう働く。A St Johnらは、マスト細胞顆粒から着想を得て、多糖類分子(キトサン、ヘパリン)マトリックスに封入されたTNFからなる微粒子を合成した。これをマウスに注射すると、微粒子は流入領域リンパ節に移動し、そこで封入されたメディエーターをゆっくり放出し、B細胞リンパ球を活性化させる。この方法による適応免疫応答の増強は、標準的なワクチンアジュバントであるミョウバンと同等以上のレベルであった。 St Johnらは、これらの微粒子がワクチン設計の柔軟性を高める(免疫応答性をTh1リンパ球優位にできるなど)ことも実証している。
doi:10.1038/nmat3222
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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